騾黒愛(Lark roa)

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 一世を風靡したギタリストの彼は、薬物の過剰摂取で死亡したと聞いた。

信じられざる噂だった。これが根も葉もなく、このまま偽の花をつけずにいるべきだ。

 

 思い立ったが吉日、今日は48日の忌日。深夜2時。

彼が“今も”いるはずのねぐらを訪れた。

コンクリート階段とスニーカーが互いに反発して、いやに無機質な音を立てる。

階段を登った先、2階の左の角部屋。チャイムが壊れているからノックをする。誰も出ない。

 撒かれた噂の種が、自らの腦味噌の中で発芽しようとしているのを感じた。

一刻も疾く、この種を燃やすための、歴とした証拠を手に入れねば、種はつるをのばし、自由な自らの思考を縛り付けて離さないであろう。

 

鍵の壊れたドアを力一杯開くと、がらんどうとした部屋に、一枚の茶封筒が落ちていた。

遺書か、はたまた犯行メッセージか。それともただの転居の報せか。

アカシジアの手を無理やり制御して紐を解いた。中には

 

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とだけ記されていた。