騾黒愛(Lark roa)

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2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

人は女ごきぶりの悲しみを知らず

「人は、女ごきぶりの悲しみなんて、ついぞ知ることがないまま生きるのですよ。」 やわらかに髪を乱す、明朝の清潔な風に、その声を聴く。 地面が歪むけがらしい暑さに、涼しく凛とした風が疲れることもなく寄り添う。 その人は、私の、ごきぶりの世界の中で…

ピーピング友

ある日の丑の刻のことである。 私が酒の酔いも少し醒めた心地で、退屈の煙によごされ乍ら、煙草屋の店先でぼうっ、として居ると、後ろから、 「兄さん、退屈しのぎのカフェインはいかが。いかが。」 と、声がする。振り返ると、疲れ切った様な、如何にものん…

草かばね

ほとほと、厭になる。 文字は、書いた瞬間から腐っていく。図書館の本が読まるる度に汚れていくように。 青魚の如く疾く劣化す。 少し格好を付けて言って了えば、文字とは「花」である。 誰にも名を知られず、勝手都合に人様のベランダへ種を飛ばし、芽を出…