騾黒愛(Lark roa)

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ザ・サポートVSザ・リード

バンドについての戦いが有った。

”ザ・サポート”はサポートメンバーだけで結成されたバンド。

皆、どこのバンドにも正式に所属はしていない。

プロミュージシャン。でも誰も名前は知らない、だってMVにも映れないんだもん。

 

ザ・サポートには「ヴォーカル」なんて居なかった。

だから無名ジャンルのアンビエント・ミュージックをやっていた。

 

メンバー紹介。

A(アニー・ケネディ)ギター

B(ボン・ジェリー)ベース

C(キャサリン)キーボード

みんな当たり前のように曲が書けた。

 

ここで、「対戦相手」のバンドも紹介しなきゃいけない。

ザ・リード

メンバーはこんな感じ。

L(リーダー・リーダー)歌手

M(マスター)ギタリストであり、売れっ子お笑いタレント。

N(ナッツ)ドラマ監督兼、ドラマー。

O(オーキッド)国会議員が本業のベーシスト。

 

奴らの仁義なき戦いについてのお話。

 

二組はどちらも、2005年、ヴァージニア州で結成。

最初はとても仲が良かった、しかし時間が経つにつれ、

果てはライヴァルにまでなってしまった。

 

あの事件のせいで。

ザ・サポートがミュージック・エアポートに出た時。

サングラスの司会者は言った。

「さあ、ザ・リードの残りカスの登場です!」

Bは瞬時に冗談だと分かった。さすが年長者。

Aは違った。

Aはカメラ、ひいては観客にまで向けてがなった。

「全員クソ喰らえだよ。そしてザ・リード、お前らホモ野郎共もな。」

 

総ての音楽記事サイトが過激にこの事件を報道した。

ー司会者が悪い

ーAが悪い

様々なコメントが寄せられたが、誰も大人気の「ザ・リード」を悪く書かなかった。

 

無論、”ホモ野郎”とまで言われたザ・リードが黙っている訳がなかった。

LはCの誘拐を企てる。

 

Lは後にこう語っている。

とある情報筋より。

「なぜCを標的にしたか?だってCは俺ら(ザ・リード)の元メンバーだろ?

そのときさ、「革命児」が必要だったんだよ、ロックなんか辞めちまって、ポップバンドにしようってさ。流行りのキーボードとか入れてさ。

”ロック魂”の炎はとっくに燃え尽きてたよ。」

「ロックスターなんか辞めだ。俺らはポップスターになるんだってね。」

 

Cの誘拐は手はず通りに行われた。

ジョンソンのバーで酒を飲んでいた、Cの誘拐なんてご存じない、愚かな二人の会話。

A「ザ・リードもよ、世間もよ、俺らを蔑視してんだよ、軽く見てるってワケ。」

紅潮したAが、シングルモルトのグラスが割れんばかりの大声でまくし立てる。

B「まあまあ、落ち着けって、ほら、水。」

つくづくBが酒が飲めない体質で良かった。

もしBまでへべれけに成っていたら、ジョンソンのバーのグーグルレビューは底にまで達するだろう。

ジョンソンが口を開いた。

「そうだよ、落ち着きなよ、ザ・リードみたいにどっしり構えたら?」

このとき、ジョンソンはこの酔客がまさかザ・リードと対立真っ只中のザ・サポートのメンバーだと知る由も無かった。無明そのものである。

A「そうやって肥溜めで一生働いてれば?飲み代は次払うよ、

 次が有ればね。行こうぜB。」

B「だな、こんな肥溜め酒場、とっとと潰れちまえよ、じゃあな、”ご主人様”!」

この時ばかりは冷静沈着で知られるBも立腹を禁じ得なかった。

”ご主人様”は変な奴らだ、くらいにしか思わなかった、日常茶飯のごとく感じられた。

 

一方その頃、LはCの脅迫の最中だった。

誰も知らない、知るはずもない、掘っ立て小屋の中での会話。

L「お前さ、真っ赤な薔薇。見たいか?」

C「薔薇?言ってる意味が分かんないわ」

L「真っ赤なお前の血液ってことだよ!」

C「傑作ね。そのセンスを作詞にもっと生かしたら?」

と微笑を浮かべるCに、

L「ふざけるのも大概にしろよ?誰がお前の"タマ"握ってんのか分かってんの?」

激昂したLがCの額により強くジップ・ガンを押し付ける。

Cは失笑した、失禁じゃないよ。

C「撃てるわけないわ」

L「なんだとこの糞ビッチが!お前の残りライフはあと1%、いや、0%なんだぜ?」

L「最後に神様にお祈りでもしたらどうだ?なあ!おい!」

C「遠慮しとくわ、だって貴方、私の’指’が欲しいんでしょ?」

L「指?ヤクザみたいに小指切り取って終いとでも思ってんのか?この白痴!」

C「白痴で結構。でもそれは貴方自身に言い聞かせたほうがいいわよ。」

C「大体わかるわよ、どうせポップ路線に移行したいから、キーボード弾ける私が恋しくなったんでしょ?捨てきれない元カノへの恋慕みたいにね。」

C「ザ・リードっていつも”正義!”みたいな薄っぺらい歌詞ばっかりよね。もし今この状況、やり方が”正義!”なんだとしたら、貴方って白痴の王様ね。」

Lはまさに「鼻毛を読まれて」、「鼻を明かされた」。

奇しくも彼の唯一のコンプレックスの鼻に関する状況になって了った。皮肉だ。

Lは恐ろしさに震える口を自身の’指’で隠しながら言った。

「金!そうだ金!お前に毎月、給料日には300万やるよ!どうだ?あの袋麵喰らいぐらいに貧しいバンドなら、そんなに儲けられないだろ?信者だって少ないだろ?」

C「いいセリフね、”ドラマ監督”さんに教えてあげたら?」

C「お金お金って、本当に欲しいのはあなたの方なんじゃないの?」

 

突如、作業着の男が闖入してきた。

C「遅いわよ、今カレさんたち。」

AとBに取り押さえられたLは、目も当てられないほど惨めで、

顕微鏡が必要なくらい矮小に見えた。

 

Lの不祥事が世間にバレてしまっては商売上がったりのO”議員”は、依願退職した。

事由欄には「ボーイフレンドの看病」

と、なかなか粋でいなせで迂遠な言葉が書かれていた。

LとOは”手を繋いで”どこかへ消えた。せうそこは神のみぞ知る。

 

ミュージック・エアポートの緊急生放送。

どこかへ消えた”ホモ野郎”などつゆ知らず。

 

新バンド デビュー!

「ザ・余りもんズ」

まずはリーダーの紹介と洒落こもう!

ヴォーカル、キーボード!

魅惑の淫魔!キャサリン!(C)

リードギター

酔拳の使い手!アニー!(A)

リズムギター

今回はお笑いじゃないぜ!マスター!(M)

俺は俺自身だけを監督することに決めたんだよ!

ドラ息子ドラマー!ナッツ!

ただのベーシスト、それだけ。

オン・ベース!ボン・ジャスト・ベース!(B)

 

それでは演奏していただきましょう!

「サンクス・フォー・サングラス」!

 

こんなところさ、ご存じ「ザ・余りもんズ」の秘話は。

なんでそんなにバンド名がダサいかって?

曲を聴いてから訊いてくれよな。

 

校長みたいに長い話、倒れずに聞いてくれた好事家たち!お前らサイコーだよ。

 

騾黒愛(Larkroa)

 

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