2022-10-24 あやめ 炉端に手向けられたあやめの花を見る毎に、ショウケイスの中の日々を思い出す。 鉄製のショウケイスには、二、三匹の同胞が詰め込まれていた。 売れていくもの、自分より売れ残るのが遅いもの。 やうやく売れてショウケイスの外へ連れ出されたとき、日光が眼窩を焼くやうに思えた。 あやめ。 青く成ってゆく花に好機を抱いて、少し触れてみたら枯れた。 花は枯れる寸前がもっとも愛おしい。