28歳になった少しあと、俺は見つけてしまった。画面の中に。
あどけない顔、少し画質の荒い笑顔、バランスボールの上で跳ねる。
俺のほうを見つめてくるたびに、思わず笑みがこぼれてしまう。こんな感情になったのはいつぶりだろうか。
俺はとても許されないような生き方をしてきた。15歳からは社会にでたり入ったりの最低の日々だった。叔父のもとで暮らし始めたが、次第に叔父の仕事を手伝わされることになり、身寄りも友人もない俺はいいなりになるしかなかった。嘘みたいな話だが、携帯電話なんて一回も持ったことがないし、テレビも、叔父が逮捕されてからはずっと見られていない。
なんて、俺の過去の身上よりも、今現在のこの心情が知りたい。
俺が見つめないても、目をそらす人間しかいなかった。集落では簡単にうわさが広まって、俺は今、東京都は目白駅前のネットカフェで寝泊まりしている。
ただ寝ているだけだったが、ふと叔父がいつか言っていた名前を思い出し、検索した。それがこの、画面の中の教祖サマだ。
教祖サマは俺が見つめ返しても目をそらさない。笑顔を絶やさない。
これくらいでよいだろうか、きっと俺は地獄に行くからもう会えないな。
ありがとう、永遠の教祖サマ。