貧しい、一人の娘がいた。娘は病のために畑しごとを手伝うことも叶わず、家族からは「魔女」と呼ばれ、辛辣な扱いを受けていた。
或る夜、娘は夢で告知を受ける。
「おまえに神の子を身籠らせやうと思ったが、其の體では難儀であろう、神のご慈悲によって、お前にこの種をやろう。畑に撒いて乾燥させて売れば、お前の病を治すのに充分足りる金貨と成るだろう。」
早朝、娘が目覚めると、手の中には調味の剤の香りがする、砂のやうなものが有った。娘は神の遣いの夢を信じて、砂を畑に放った。
数か月がたったころ、病の落ち着くころに、娘は「雑草抜き」と云って其の植物を刈り取り、母屋に戻ると乾燥させた。
家族が商人に米を売ったのを見て、こっそりと商人の後をつけて行った。
「これは、神様の遣いが下すった植物です。わたしの病のために、下すったのです。」
商人は、素っ頓狂な顔をしたが、「金になるなら何でも貰うよ。」と受け取った。
暫時。商人が彼の植物を「万能薬」と銘打って大繁盛。という報せを受けた。
商人は母屋には寄らず、こっそりと娘のいるところへ、にじり寄った。
「これ、お前さんの分の金。病さはよ直してもらえ。」
娘は商人におぶって貰って、町医者へと行った。
娘はやうやく安堵した。神様と、その遣いに感謝した。
町医者は薬を出して呉れた。
「一日三遍、火を点けて煙を吸うだけで、肺病はたちまち治ります。万能薬です。」