騾黒愛(Lark roa)

larkroa@gmail.com

生産者の顔

だうも、人と云ふものは著者と作品を分けて考えられないやうだ。

文豪が自殺した、だからこの作品は文豪の自伝で或る。

なぞと決めつける。

作詞者が堕胎した、だからこの曲は堕胎がテーマで或る。

歌手が逮捕された、だからあの歌は麻薬がテーマで或る。

人気者が自伝を出した。だから傑作に違いない。

なんちゃら賞作家の新作。だから傑作に違いない。

あの映画監督の新作。だから傑作に違いない。

あの事務所の新アイドル。だから傑作に違いない。

淫靡な漫画の著者は、淫猥に違いない。

 

そうして後に、好き勝手に文句を口にするので或る。

「あのバンドの新曲、最悪」

「あのアイドルの新メンバー、ブサイク」

「あの少女漫画の作者が男だったなんて…ショック」

「あの声優好きだったのに結婚とか…アニメのDVD割ります」

私見によれば、作者目下の生活に厭な雲ありて、才能の素直に発せざる憾みあった」

 

スーパーの野菜の生産者の顔はあまり見ない癖に、まったく、おかしな人たちですね。